ネットを張る前から、バドミントンの時間は始まっている
体育館の床に引かれた線を見ていると、同じ場所がいろいろなスポーツの会場になるんだな、と感じる。バドミントンのコートも、最初から完成した形で待っているとは限らない。支柱を立て、ネットを張り、荷物を置く場所を整える。ラケットを振る前に、遊べる場所をつくる時間がある。
今回は、いつものプレーから少し目線をずらして、準備や片付けの話。面倒な作業を頑張ろう、という話ではなくて、みんなで使う場所との付き合い方を考えてみたい。
「会場がある」と「遊べる」は、ちょっと違う
広い床と高い天井があっても、それだけでバドミントンが始められるわけではない。設備を確認したり、足元に危ないものがないか見たり。目立たないけれど、実際に打てる状態にするためには、いくつもの小さな段取りがある。
こういう部分は、プレーが始まるとすぐに背景になってしまう。ネットが張ってあれば、それを当たり前の景色として受け取れるからだ。でも、その景色は誰かのひと手間でできている。そう思うと、体育館の見え方が少し変わってくる。
もちろん、来た人全員が設備の扱いを知っている必要はない。支柱やネットには施設ごとの決まりもあるので、慣れていないまま動かすより、まず確認するほうが安心。分からないときに「何をしたらいい?」と聞くことも、十分に役に立つ関わり方だ。
大事なのは、何でも自分でできることより、場所が整うまでに目を向けること。コートに入る前の数分にも、一緒に活動する相手の存在がある。
上手に打てるかどうかとは、別の出番がある
サークルには、女性や初心者が多く、年齢もレベルもさまざまな人が集まっている。そんな場所では、バドミントン歴の長さだけで、その日の役割が決まるわけではない。打ち方はまだ分からなくても、散らばったシャトルを集めたり、自分の荷物をコンパクトにまとめたりすることはできる。
プレー中の得意不得意とは別に、気づいたことを一つする。それだけでも、共有する空間は使いやすくなる。反対に、経験者だからといって、準備を全部引き受けなければいけないわけでもない。
手伝うときの目安は、こんなふうに考えると分かりやすい。
・設備の扱いが分からないときは、動かす前に確認する
・人が通る場所には、荷物やラケットを広げない
・手が足りていそうなら、無理に作業を増やさない
何かしていないと居づらい、という空気にする必要はないし、重い物を運ぶのが難しい人もいる。できることの違いを前提にしておくと、手伝いは義務の押し付けではなく、自然な持ち寄りになる。和気あいあいとした雰囲気には、そんな余白も似合うと思う。
借りる道具は、次の人へのバトンでもある
このサークルではラケットを借りられるので、自分の一本を持っていなくても参加できる。持ち物は室内靴だけで大丈夫。始める前に道具を一式そろえなくていいのは、バドミントンをやってみたい人にとって、うれしい入口だ。
そして、借りられる道具があるということは、同じ道具を別の誰かも使うということ。使い終えたラケットを決められた場所へ戻す、気になる傷みがあれば伝える。特別な知識より、次に使う人を想像することが大切になる。
シャトルも同じで、床に残ったままだと踏んでしまうかもしれないし、人が歩く場所に転がっていれば危ない。自分のゲームが終わったところで足元を見渡すだけでも、道具と場所の両方を大切にできる。
ただ、片付け方にはその場のルールがある。良かれと思って勝手に収納場所を変えるより、戻し先を確認するほうが親切なこともある。きれいに見せることより、次も迷わず使える状態を目指す。そう考えると、道具を返す最後の動作まで、遊びの続きに思えてくる。
最後の一球のあとにも、できること
楽しく打っていると、終了時間は案外すぐにやってくる。もう一ゲームしたい気持ちはあっても、体育館は自分たちだけの場所ではない。施設の利用時間や片付けの案内に合わせて終えることも、活動の大切な一部だ。
最後の一球から、荷物を持って外へ出るまで。その間に、忘れ物を確かめたり、周りに道具が残っていないか見たりする時間を少し残しておきたい。帰るところまで見通すと、終了間際に慌てずに済む。
準備や片付けに目を向けるのは、立派な参加者になるためではない。自分も使った場所だから、使い終わりにも少し関わる。そのくらいの、暮らしに近い感覚でいいと思う。毎回大きな役割を担うより、小さな気配りを無理なく続けるほうが、ずっと自然だ。
ネットを外すと、そこはまた広い体育館に戻る。さっきまで遊んでいた場所を整えて帰ると、楽しかった時間にもきちんと区切りがつく。バドミントンの時間を、打った本数だけでなく、場所を一緒に使った時間として味わってみる。そんな楽しみ方も、なかなかいいんじゃないかな。