画面から目を上げて、シャトルを追う。通知のない時間の楽しみ方
メッセージを返したら、次はニュース。そのあと動画を一本だけ、のつもりがもう何本か。スマホは便利だけれど、用事がなくても画面を開いてしまうことってある。何かを見ていたはずなのに、何を見たのかあまり覚えていない。そんな時間も、別に珍しくないと思う。
だからといって、スマホを使わない生活を目指すのは大げさだ。もっと小さく、ラケットを持っている間だけ画面から離れてみる。今回は、バドミントンを「通知に呼ばれない時間」という角度から眺めてみたい。
目の前の一球には、あとで返事ができない
スマホのメッセージなら、少し考えてから返信できる。文章を消して書き直すことも、いったん閉じることもできる。でも、ネットを越えてくるシャトルは、こちらの都合では止まってくれない。落ちる前に動いて、ラケットを出す。その今しかない感じが、バドミントンの面白いところだ。
難しいことを考える余裕がない、というより、考える対象がはっきりしている。高く上がったのか、手前に落ちそうなのか。見えているものに体を合わせる。画面の中でいくつもの話題を行き来するのとは違い、注意の向け先が一つのコートにまとまっていく。
もちろん、最初から集中し続ける必要はない。空振りをしても、打ち損ねても、次の一球が来る。集中力を鍛えるための課題ではなく、自然と目の前を見たくなる遊び、と考えるくらいがちょうどいい。
文字にしなくても受け取れるものがある
体育館で受け取る情報は、目で見るものだけじゃない。シャトルがラケットに当たる音、床を踏む足の感触、打った瞬間に手へ返ってくる小さな振動。画面では伝わりにくい手触りのある情報が、プレーの中にはいくつもある。
たとえば、同じように振ったつもりでも、当たる場所によって音や感触が違う。シャトルは勢いよく進んだあと、ふっと速度を落として落ちてくる。その変化を、動画の再生速度を変えるのではなく、自分の目と体で追いかける。うまく返せたかどうかとは別に、そんな動きそのものを味わえる。
特別な観察をしようと身構えなくても大丈夫。ラケットを持ち、足を動かしているだけで、普段はあまり意識しない感覚を使っている。結果だけを読み取るのではなく、途中の感触にも楽しさがあるのが、実際にやってみることのよさだと思う。
空いた数分を、すぐ埋めなくてもいい
プレーしていない間は、ついスマホへ手が伸びるかもしれない。連絡を確認したいこともあるし、それはもちろん自由。ただ、急ぎの用事がなければ、一度くらいは何も開かない休憩にしてみるのもいい。
水を飲んで、呼吸が落ち着くのを待つ。タオルで汗を拭いて、靴ひもの緩みを確かめる。さっきまで動いていた足が少し重いとか、体育館の空気が思ったより暖かいとか、自分の状態にも気づきやすくなる。空いた時間に新しい情報を足さなくても、やることは案外ある。
誰かと話してもいいし、静かに座っていてもいい。和気あいあいとしたサークルでも、ずっと会話を続けなければいけないわけではない。黙ってひと息つく時間も、同じ場所で過ごす時間の一部。休憩まで充実させようと頑張らなくていい。
スマホ禁止ではなく、置き場所を変えてみる
せっかくなら画面を見ないように、と決めても、守れなかったことが気になってしまったら本末転倒。必要なのは厳しいルールより、手に取るまでのひと手間かもしれない。ポケットではなくバッグに入れるだけでも、無意識に画面を開くきっかけは減らせる。
試すなら、こんな小さな工夫で十分だ。
・急ぎの連絡がないか、着替える前に確認する
・プレー中はスマホをバッグにしまっておく
・休憩では、まず水分補給をしてから必要な連絡を見る
家族や仕事の連絡を待っているなら、確認できる状態にしておけばいい。ほかの人にも同じ過ごし方を求めないことが大切だ。画面を見ないこと自体が目的ではなく、自分で使い方を選ぶための工夫だから。それぞれの事情に合わせて、気楽に試してみたい。
記録に残らない時間を持ち帰る
バドミントンをした時間は、全部を写真や数字に残さなくても成立する。何本返せたかを数えていなくても、気の利いた感想を投稿しなくても、その場で体を動かしたことはなくならない。残すためではない楽しみが、予定の中にあってもいいと思う。
このサークルには初心者も多く、年齢も経験もさまざま。画面から離れるために、いきなり本格的な道具をそろえる必要もない。ラケットは借りられるので、持ち物は室内靴だけで大丈夫。当日参加も歓迎している。
スマホを遠ざける決意より、まずは手にラケットを持つことから。通知が来たかどうかではなく、シャトルがどこへ飛ぶかを気にする。そんな時間を、いつもの一週間に少し加えてみませんか。